【from Editor】小泉訪朝から10年の現実

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 本紙政治面では日々、首相の動静をきめ細かく伝えている(現在は「野田日誌」)。首相がだれとどのくらいの長さ会ったかを確認することは、政治ウオッチャーとして重要な日課だ。この動静欄を外交に活用した官僚がいた。北朝鮮との秘密外交を展開した田中均・元外務省アジア大洋州局長だ。
 平成14年9月17日の小泉純一郎元首相の電撃訪朝。交渉を担当した田中氏からしばらく後、打ち明け話を聞いた。「ミスターX」と呼ばれた北朝鮮側の担当者と会う前後には必ず官邸に行き、動静欄に自分の名前が載るよう心がけていたそうだ。自分が首相の信任を得て交渉を進めていることを示すためであり、ミスターXにも「日本の新聞をよく見てください」と伝えたという。
 それ以降、田中氏が金曜日に官邸に出かけると、週末に秘密裏に「ミスターX」と会うため外国に出かけるのではないかと警戒したものだった。「ミスターX」は誰なのかさまざまな臆測が出た。田中氏は語ろうとしなかったが、Xと会ったことのある別の外務官僚は「色白の物静かな人だった」と振り返る。新聞を読めば首相の動静がわかる日本と違って交渉相手の本名すらわからない。北朝鮮相手の交渉の難しさを示している。
 訪朝した小泉氏に北朝鮮の金正日総書記は拉致の事実を認め、5人の拉致被害者の帰国も実現した。だが、会談後に2人が署名した「日朝平壌宣言」には拉致の文言はなかった。訪問前の外務省内の協議で、この点を聞かれた田中氏は拉致については別途交渉していると説明したものの、北朝鮮が示した回答に対する日本国内の反発の強さを予想できなかったという意味で見通しが甘かった。
 日朝関係の膠着(こうちゃく)からミスターXを通じた交渉が途絶えて以降、拉致問題は進展がない。田中氏の秘密主義的な手法は批判されたが、事態打開のためには、「ミスターX同様に金正恩第1書記、あるいはその後ろ盾である叔父の張成沢国防副委員長に直接報告ができる相手をつかまえ、水面下で交渉することが、北朝鮮相手では重要だ」と、ある外務省幹部は語る。
 まもなく小泉訪朝から10年になる。横田めぐみさんらの安否はいまだわからない。ワシントン勤務時代、訪米しためぐみさんの母、早紀江さんが米議会公聴会で切々と訴えるのを傍聴し、胸が熱くなった。10年を機に当時の交渉を振り返るとともに、解決に向けた手がかりはあるのか探っていきたい。(副編集長 有元隆志)

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120818/plc12081808170006-n1.htm

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 本紙政治面では日々、首相の動静をきめ細かく伝えている(現在は「野田日誌」)。首相がだれとどのくらいの長さ会ったかを確認することは、政治ウオッチャーとして重要な日課だ。この動静欄を外交に活用した官僚がいた。北朝鮮との秘密外交を展開した田中均・元外務省アジア大洋州局長だ。
 平成14年9月17日の小泉純一郎元首相の電撃訪朝。交渉を担当した田中氏からしばらく後、打ち明け話を聞いた。「ミスターX」と呼ばれた北朝鮮側の担当者と会う前後には必ず官邸に行き、動静欄に自分の名前が載るよう心がけていたそうだ。自分が首相の信任を得て交渉を進めていることを示すためであり、ミスターXにも「日本の新聞をよく見てください」と伝えたという。
 それ以降、田中氏が金曜日に官邸に出かけると、週末に秘密裏に「ミスターX」と会うため外国に出かけるのではないかと警戒したものだった。「ミスターX」は誰なのかさまざまな臆測が出た。田中氏は語ろうとしなかったが、Xと会ったことのある別の外務官僚は「色白の物静かな人だった」と振り返る。新聞を読めば首相の動静がわかる日本と違って交渉相手の本名すらわからない。北朝鮮相手の交渉の難しさを示している。
 訪朝した小泉氏に北朝鮮の金正日総書記は拉致の事実を認め、5人の拉致被害者の帰国も実現した。だが、会談後に2人が署名した「日朝平壌宣言」には拉致の文言はなかった。訪問前の外務省内の協議で、この点を聞かれた田中氏は拉致については別途交渉していると説明したものの、北朝鮮が示した回答に対する日本国内の反発の強さを予想できなかったという意味で見通しが甘かった。
 日朝関係の膠着(こうちゃく)からミスターXを通じた交渉が途絶えて以降、拉致問題は進展がない。田中氏の秘密主義的な手法は批判されたが、事態打開のためには、「ミスターX同様に金正恩第1書記、あるいはその後ろ盾である叔父の張成沢国防副委員長に直接報告ができる相手をつかまえ、水面下で交渉することが、北朝鮮相手では重要だ」と、ある外務省幹部は語る。
 まもなく小泉訪朝から10年になる。横田めぐみさんらの安否はいまだわからない。ワシントン勤務時代、訪米しためぐみさんの母、早紀江さんが米議会公聴会で切々と訴えるのを傍聴し、胸が熱くなった。10年を機に当時の交渉を振り返るとともに、解決に向けた手がかりはあるのか探っていきたい。(副編集長 有元隆志)

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